そこで、本記事では、2025年4月30日時点での最新情報をお伝えしていきます。
現場の声:米国輸出の現状

2024年日本酒の輸出実績をみると、数量1位はアメリカ(8,003kL・前年比123.1%増)です。
アメリカでの輸出に販路を見出している酒蔵も多く、製造の多くを米国向けにしている蔵も多数あるのが現状。
例えば、IWC 2015ではチャンピオン・サケの獲得実績もある福島県の「ほまれ酒造」では、昨年の輸出額約2億2000万円のうち7割が米国向けです。
関税の影響を受け、ほまれ酒造の唐橋社長は、「5月までの注文に変動はないが、これからキャンセルが出始めるのか。間に入っている取引業者も『先を見通せない』と言っている」と語り、事業計画を大きく変更せざるを得ない状況のようです。(TBSニュース, 2025年4月)
コスト高・関税・インフレ─日本酒業界を襲う“三重苦”
実はトランプ関税だけでなく、日本酒業界は今、三つの課題に直面しています。
- 原材料コストの上昇:日本国内では、お米全体の価格高騰が起こっており、酒米の価格も2024年に比べて約3割も値上げされています。国内外で高い評価を受け、数々の受賞歴を誇る「作(ざく)」をつくる清水清三郎商店の清水社長も、酒米の確保を喫緊の課題としています。(TBSニュース, 2025年4月)
- トランプ関税によるコスト増:従来は1%未満だった米国の関税が10%に跳ね上がり、レストランでの販売価格や小売価格現地小売価格の上昇は避けられません。(今後24%に上がる可能性あり)。
- 米国のインフレ圧力:米国ではインフレの影響で、飲食店に行くのを控える人が増えており、高価格帯からより飲みやすい価格帯のお酒にシフトするお店も増えてきているようです。
当面のインポーターおよび酒蔵の対応
現在の90日間の猶予期間(7月上旬まで)をどう活用するかが鍵となっており、これは日本酒に限ったことではありませんが、米国のインポーターの中には、猶予期間中に前倒しで発注を増やし、10%関税下でできるだけ多くの在庫を確保する動きも見られています。
また、より長期的な視点では、各酒蔵において、輸出先国の多角化を強化していくことが予想されています。例えば、和食がトレンドになり日本酒需要の高まるヨーロッパや、日本酒人気が高まる韓国などへの展開が考えられます。
まとめ
2024年末に「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され、追い風となっていた日本酒産業ですが、米国市場の関税によって状況は一変してしまいました。
24%の追加関税の実施の有無によって、さらに状況が変わることは必至ですので、今後の動向を当社でも追っていきたいと考えています。
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